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初めての自転車 選び方 その3

第1回はロード、第2回はクロスバイクときて、いよいよ最後のMTBです。

結論をストレートに書きますが、1台目として最適なのはMTBだと考えます。

理由は・・・

1.自転車の実用速度域が町乗りに最適

2.きわめてよく効くブレーキと、スリップしにくい太いタイヤ

3.ゆるめの前傾姿勢

4.操縦安定性を高めるサスペンション

5.状況に応じたタイヤ選択幅の豊富さ


です。

まず1ですが、MTBは競技であっても歩くような速度で走ることがよくあります。
例えば急峻な登りだったり、ぬかるんだ道だったり・・・
そういう速度域で走ることも想定した設計になっていますので、ビギナーの方がゆっくり走ってもロードやクロスバイクよりずっと安定するはずです。

また、MTBは登山道ぐらいの小径(専門的にはシングルトラックと言います)を走ることを前提とした設計になっています。
つまり、細くて曲がりくねった道をジグザグ走行することを得意としています。

ですから上記2つをまとめると、都市部において歩道を走行する際の状況下にピッタリ適合します。
※くれぐれも申し上げますが、自転車は車道を走るべきです。法整備にインフラが全く追いついていない現状を熟慮した上での記述です。

次に2のブレーキですが、最近のMTBはディスクブレーキを装備していることが多いです。ディスクブレーキは停止までの減速を視野に入れたものですので、女性が指一本で簡単にタイヤをロックできるほどの性能があります。
しかもタイヤの横幅が2インチぐらい(約5cm)ありますので、ロードやクロスバイクのタイヤとは比較にならないほど地面と接触している面積が広いです。接地面積の広さが意味しているのは、ブレーキの力が地面によく伝わるということと、スリップしにくいということです。

そして3ですが、MTBがロードやクロスバイクと決定的に違うことの一つに「縦の動き」を想定しているかいないかがあります。
「縦の動き」というと難しいですが、要するに段差を登ったり降りたりすることです。これと対になる言葉は「横の動き」で、コーナーを曲がったりすることです。

前述したようにMTBは登山道を走ったりすることを想定しています。登山道をイメージすればすぐわかると思いますが、段差だらけです。そういう場所も走れるように、MTBはハンドルまでの距離が短めで位置も高く、自転車に乗っている状態でも身体が前後、左右、上下に動かしやすくなっています。

町中にはそんなに段差なんてあったっけ?・・・と思うかもしれませんが、よくよく道路を観察してみてください。車道と歩道の境目には3cm程度の段差がありますし、車が歩道を横切って通過する場所(駐車場の入り口など)などは15cm程度の高低差があるスロープがあります。歩道でも街路樹の根でボコボコになっているところもありますし、数えだしたら枚挙にいとまがありません。
田舎道を走るよりも、市街地の方がよっぽどオフロードに近いんじゃないかと思います。

さらに4ですが、最近のMTBにはサスペンションがついていることがよくあります。
これによって路面からの衝撃が吸収され乗り心地がとても良くなりますし、なにより操縦安定性が大幅に改善されます。
これはサスペンションの本当の目的が、タイヤを常に地面に付けておくことだからです。
タイヤが空中に浮いた状態だと、ブレーキもハンドル操作もまったく効果がないことはすぐわかると思います。

上級者はサスペンションが無くても身体の動きでカバーできますが、ビギナーの方はサスペンションがその役割を肩代わりしてくれるので、あったほうが操縦暗転生を高めてくれることは間違いないでしょう。


もちろんデメリットもたくさんあります。
一番顕著なのは、タイヤが太くなることによって抵抗が増え、ロードやクロスバイクより走行感(疾走感と言った方が適切かも?)は劣ります。これはどうあがいても、ロードやクロスバイクには勝てません。
しかしながら、MTBなら対応策があるのです。それが5です。

市販状態のMTBの多くは、ゴツゴツしたパターンの太いタイヤがついています。これはオフロードを走るときに絶大な効果を生みますが、市街地オンリーの場合は余計な抵抗となってしまいます。
それを細身で表面がツルっとしたタイヤ(スリックタイヤなどと呼ばれています)に取り替えるだけで、クロスバイク並みの性能にすぐ変身してしまいます。
舗装路向け・細身のタイヤで一般的なのは26x1.25(車輪径x太さ 単位はインチ)ですが、約32mmです。これならもうクロスバイクと同じぐらいの細さです。

じゃぁ逆の方向、太くしたい場合はどうかといえば、2.35~2.5インチぐらいまでが一般的なサイズです。
2.5インチは約64mmもありますから、見た目的には原付ぐらいに見えます。

MTBはもともと2インチ前後のタイヤが入るようなフレーム設計になっているので細くも太くもできますが、ロードやクロスバイクでは限度があります。そして、ちょっとグリップが欲しい・・・たとえば河川敷や土手などがあって、そこは未舗装で小砂利が敷き詰められているような場所・・・がルート場にある場合、MTBならちょっと太めのスリックタイヤを使うことで難なく行けてしまったりします。

ロードやクロスバイクはそもそも舗装路用の自転車なので、タイヤの太さは最大でも10mm程度しか変更することができません。
一方でMTBは太さは1.25~2.5インチまで変えられますし、路面に応じて数々のパターンを選べます。オフロード用でも乾いた路面用、ドロドロの路面用など・・・その気になれば、雪道用のスパイクタイヤだってあります。もちろん、前述のように舗装路用も用意されています。つまり、MTBが1台あればタイヤを交換するだけでどこでも走れるマルチな自転車になり得るのです。
その中で「やっぱり舗装路をびゅーんと走るのが楽しい!」と思えばロードに買い換えるのも良いと思いますし、自分の好みに応じた次のステップを考えれば良いと思います。
最初からロードやクロスバイクだと、オフロードを走る楽しみを喰わず嫌いで終わってしまうかもしれませんよ・・・

というわけで、最初の1台にどの車種を買うか迷ったら、「MTBにしましょう!」と自信を持ってオススメします。

次回はおまけ、西井が考える最強の町乗りバイク・・・
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初めての自転車 選び方 その2

さて、前回は選び方その1と称してロードについて書きましたが、今回はクロスバイクです。

クロスバイクはロードよりも最初の1台としてお勧めです。
その理由は

1.よく効くブレーキ

2.適度なタイヤ太さ

3.それほどきつくない前傾ポジション


です。

まず1ですが、MTBにも使われている(現状としては使われていた・・・かな?)Vブレーキを搭載していることが多いです。このブレーキは停止までを視野に入れた制動力があるので、町中で急制動が必要になるような場合にもロードよりは安心できます。

それに関連するのが2のタイヤ太さです。ブレーキはタイヤを介して地面に摩擦力を伝えているので、細いタイヤよりは太いタイヤの方がブレーキの力が伝わることになります。ロードだとタイヤの太さがだいたい19~23mmぐらいですが、クロスバイクだと28mm~32mmぐらいです。たった5mmの違いしかありませんがタイヤに入れられる空気の量が違いますので、見た目・乗った感じとも印象はかなり違います。
また空気の量が多いと言うことはタイヤのサスペンション効果が高まりますので、乗り心地もロードに比べたらかなり良くなります。

そして3ですが、クロスバイクは非競技的スポーツサイクリング用自転車なので、ハンドルもロードと比較して高く近い設定になっています。とは言いつつもママチャリと比べたらかなり低く遠いので、鵜呑みせず自転車店でまたがって確認しましょう。

と、ロードに比べたら良いことずくめのように思えますが、あくまでも「ロードと比べたら」レベルです。
タイヤが少々太くなったとはいえ、まだまだママチャリより細いぐらいです。なので、歩道の段差などの路上障害物はちゃんと抜重して越えないとすぐパンクにつながります。
段差に斜めから進入なんていうのは、ロードと同じぐらいの慎重さが必要です。

ロードの1で書いた「実用速度域」について、クロスバイクは何km/hぐらいに設定されているのかよくわかりません。でもおそらく、歩道を走るような低速にはなっていないでしょう。おおむね20~30km/hぐらいかと予想します。
誤解の無いように書いておきますが、自転車は車道を走るべきです。これははっきりと申し上げておきます。
あくまでも都市部の現状として自転車が車道を走れるような環境になっていないため、歩道を走行せざるを得ない事態を想定してのことです。

このスピードにしてあのブレーキとタイヤだと、個人的にはちょっと不安です。つまり、ブレーキ性能は格段にアップしたのに、タイヤがまだまだ細くてスリップしやすいままだと思うのです。
タイヤが細いほど地面との摩擦抵抗が減って、より少ない力で高速に走れるようになりますが、その反作用として乗り心地や制動能力を犠牲にします。
前回お話ししたように町乗りでは急ブレーキのシーンが沢山ありますから、はたしてビギナーの方がスリップする(スリップしかけた)自転車をコントロールしきれるかどうかは疑問です。

また、実用速度域が20km/h~というのも歩道を走る上では微妙な設定です。
たとえば歩行者の移動スピードは4km/hぐらいですから、その5倍のスピードで横をすり抜ける・・・しかも歩行者の間を縫うようにジグザグ運転しながら・・・車道に置き換えてみれば、40km/hで走っている原付の間をスポーツカーが200km/hですり抜けていくのと同じことです!
クロスバイクやロードバイクはそういう細かいジグザグ運転を得意とした設計にはなっていません。どちらかと言えば車道を流れに乗って、スイーっと走っていくための自転車です。
そういう設計の自転車で歩道を走るとしたら、その自転車が持つ快適な巡航速度を犠牲にして安全に回避できるよう走るしかありませんが、それももったいない話ですしフラストレーションのたまる走り方ですよね。

ですから、郊外にお住まいの方で車道をスイーっと走って行ける場合には、クロスバイクは最初の1台として最適かもしれません。

次回、MTB編に続く。

初めての自転車 選び方 その1

だんだん暖かくなってきたので、自転車に乗り始めようと思う人も増えるのではないでしょうか?
特にこの時期もっともよく相談を受ける内容が、

初めてスポーツ用自転車を買おうと思ってるんですが、どんな自転車がオススメですか?」

ですね。

結論から言ってしまうと、「楽しく続けられることが何より一番なので、自分が気に入った自転車に乗りなさい!」に尽きますが、それではアドバイスにならないので西井的観点からのオススメを書いてみたいと思います。

まずはじめに、最初の1台を考える際のスポーツ用自転車は大まかにロード・MTB・クロスバイクの3車種に絞られると思います。
そして使用状況は町乗りメインで、1ヶ月に1回程度のサイクリングと仮定します。

そうすると、最初の1台として購入するのならロードは敬遠した方が良いと思います。
その理由を優先順に並べると・・・

1. 実用速度域が町乗りに合わない

2. ブレーキ性能が町乗りの状況に合わない

3. ビギナーにはタイヤが細すぎる

4. ポジション(前傾)がきつい


といったところでしょうか。

まず1ですが、そもそもロードは長距離を高速で走れるように設計されています。ですから、町中で30km/h以下で発進停止を繰り返すのは、ロードにとって最も苦手とする分野と言えます。
実はこの陰に長距離を高速で(効率よく)走行できるようにという意味が込められているので、設計上の想定速度外だと極めてツライ乗り物になってしまうという可能性があります。

これはレース用のロードバイクにも当てはまります。中級クラスの方がレース用のトップモデルを購入するのは、個人的には避けたほうが良いと思います。これは前述のように、トップモデルは上級クラスの選手が40km/hで巡航することを目的とした設計になっていることが多いので、その速度域で走れないとむしろ脚にくるフレームになってしまうことが往々にしてあります。
そういう事を意識せずにレース用高級車種=最高!と思いがちですが、必ずしもそうではないと考えます。

そして2ですが、前述したように町中では発進停止を繰り返します。
ロードは巡航することを前提にした乗り物なので、ブレーキはスピードコントロールを主な目的にしています。要するに、減速はするけれど走りの中の減速であって、停車レベルの減速は得意としていません。

町中ではとっさに急ブレーキが必要なシーンが多々ありますから、そういうときにも止まりきれない、という可能性があります。

さらに3ですが、町中は道路の段差やマンホールなど路上(路面)障害物が非常に多いです。多いというか、むしろ無い場所を探す方が難しいでしょう。
ビギナーの方は「自転車は車道だけを走りなさい」と言われても最初は怖くてできないと思うので、歩道に入ったりすることもあるかと思います。そういった場合、抜重(「ばつじゅう」と読みます)という動作を知らないとタイヤが段差にヒットし、パンクする可能性が高くなります。
しかも歩道と車道の境目とか、車道でも縁石ギリギリだと路面に小石やゴミ、何かの破片などが溜まりやすいので、そういったものを踏んでしまうことによるパンクのリスクも高まります。

これはタイヤが細いことだけが原因ではないんですが、ロードのタイヤは細い=タイヤのゴムも薄い=ので、結果としてそうなりやすいということです。
※上級者は抜重やライン取りが上手いので、ロードでもMTBでもパンクのリスクは大差ないと思います。

それと良くありがちなのが、段差に対して斜めに進入することです。たとえば車道を走っていて、前に路上駐車があったから歩道に入った、なんてシーン身に覚えがありませんか?

このとき、細いタイヤだと当然スリップしやすい訳ですが、前輪がスリップするとコーナリングフォースが失われて転倒しやすくなるのは力学的にも説明できます。興味のある人は「ロードバイクの科学」という本を読んでみてください。

最後に4ですが、何度も繰り返すようにロードは長距離・高速巡航用につくられた自転車です。自転車で走っているときの主な敵は空気抵抗ですので、それを少なくするためにハンドルが低く遠くなっています。

これが慣れないうちは、首や肩が凝る原因にもなります。つまり、上半身が地面と水平になるぐらい傾くのに、顔は前を見ないといけないわけですから・・・
辛くなってくると下ばかり見てしまうことにもなるので、それは大変危険です。
慣れるのには個人差がありますが、慣れる前にこの肩周りの疲労が嫌になってやめてしまう人も多いと聞きます。

続かなかったらせっかく買った自転車がもったいないので、以上のような理由から「月に1回のサイクリングを思いっきり満喫したい!」という方以外は「最初の1台にロードバイクを買うのは避けた方が良い」と思うのです。
いや、個人的には月に1回のサイクリングもロードじゃなくてOKなんですが・・・この話はまた後日。

次回、クロスバイク編に続く

ステージ終了

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さてさて、しばらく滞っていたのはこのためでもあります。

人生何度目のステージかわかりませんが、この3月末を持ちまして国立長寿医療センター研究所の職務を完了しました。
というわけで、そんなタイトルになってます。

駆け込み乗車的に仕事がドドドーっときましたが、それもなんとか終了しました。
オフィスの片付けも完了し有休消化に入ったため、「定年になるとこんな感じかな~」なんて勝手に妄想しています。

4月からは新しい仕事を始めますが、それはまたその時が来たらご報告させていただきます。

来年度は、もう少し高頻度にアップできるように頑張ります(汗)
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プロフィール

Nishii Takumi

Author:Nishii Takumi
○株式会社 地域資源バンクNIU 取締役
○サイクリストの秘密ラボ・flasco主宰
○博士(体育学)
○中京大学人工知能高等研究所 研究員
○2008北京オリンピックMTB日本代表チーム 監督
○2010ユースオリンピック(シンガポール)・2014ユースオリンピック(南京) 自転車日本代表チーム 総監督

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