JOC ジュニアオリンピックカップ/2017全国ユース選抜マウンテンバイク大会に行ってきました その2

前回は現場で感じた違和感その1を綴りましたが、今回はその2として機材について綴ります。長文ですので、お時間のあるときにでもどうぞ。

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もはや機材が競争しているとでも言えば良いのでしょうか。出場している子どもたちの機材がとんでもないことになっていました(特に小学生クラス)。結論的に言うと、「勝つことを目的とするあまり、身長による適性サイズを全く無視している選手が、恐ろしいほど多い」のです。

その最たる例がホイールの大きさです。MTBではホイール径が大きいほど有利に働くことが多いので、27.5インチや29インチのバイクに乗っている子がいます。約10年前、この大会が始まった頃には「小学生に26インチは大きすぎるんじゃないか」と心配したものですが、もはや26インチがかわいく見えます。29インチだと大人でもポジションが出ないケースが多いのに、子どもでポジションが出る確率は極めて低いはず。前輪と後輪の間に埋もれるようにして?乗る子どもの多いこと!子どもの体格に合わせて機材を選択するよりも、成績優先で機材を選択しているようにしか見えません。

このような径の大きいホイールに、子どもの頃は乗るべきではないと考えます。なぜか?技術的な上達が阻害されるからです。ホイール径が大きくなると障害物に当たっても簡単に乗り越えられるようになるので、減速しにくくなります。ということは、技術が足りなくても難しいところを行けてしまう。子どもの頃にいっぱい試行錯誤というか、チャレンジと失敗を繰り返すことでコツをつかんでいくのですが、その能力向上のチャンスを「勝つこと」を目的とした機材選択が奪っています。つまり、いま径の大きいホイールに乗っている子は、大人になってから改めて技術を覚えないといけなくなります。大人になって、より高みを目指すときにそんなことに時間を取られていたら、登れる山の高さが低くなるのは明らかです。

「いや、大人になってもそのサイズのホイールを使うから!」と反論する方もいるかもしれません。たとえば・・・数年後、お子さんがジュニアクラスでCJ登録レースに参加。コース上に29インチでも乗り越えにくい障害がありました。子どもの頃24インチでも障害をクリアできていたA君は、ホイール径が大きくなっても同じことをするだけなのでクリアしていきます。小学生のときから径の大きいホイールでオートマチックに乗り越えていたB君はやりかたを知らないので、そのセクションを通過するたびに足をつく・・・

「できるけどやらない」のと、「そもそもできない」は次元が違うのです。

そしてホイール径の大きいMTBは往々にして大人用なので、子どもの身長に合ったフレームサイズではありません。例えば、トップチューブは長すぎますし、ハンドル位置が高くなりすぎます。それを回避するために、ステムが上下逆向きの角度になっているMTBの多いこと! それでもハンドルが高すぎるのか、ライザーバーを上下ひっくりかえしてグリップ位置を下げています。そこまでしないとポジションが出ないのは(いや、それでもポジションは出ていませんが)、その子の体格とフレームサイズが合っていないってことにすぐ気付くはずですが・・・。成績を優先するあまり、道具によるアドバンテージを重視している実態が垣間見えます。

プロ選手がそうしているから、というのは極めて危険な参考方法です。彼らは与えられた機材で走ることを条件に機材面・資金面でのサポートをもらっていますから、自分が乗りたいバイクかどうかを選択できる余地はありません。その限られた条件の中でなんとかパフォーマンスを発揮できるよう、やむを得ずやっていることが果たして参考になるかどうか、です。

ペダルもそうです。多くの子どもがビンディングペダルを使っていました。こどもたちの脚はそれこそ一晩単位でぐんぐん伸張していますし、その伸張に合わせてペダリングスキルも変化しているのに、ビンディングで固定してしまったら脚の自由な動きを止めてしまいかねません。それもクリートが正しい位置に固定されている、という前提があっての話です。クリートが良くない位置に固定されているのか、あきらかにおかしいペダリングをしている子どもを何人か見ました。彼らが故障しないと良いのですが・・・
また、足を確実に固定してくれちゃうわけですから、「不安定な状況下で安定させる」という能力が奪われていきます。大会直前のトレーニングキャンプでビンディングペダルを禁止している理由は、そこにあります。

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クランク長も驚きました。レース用の高級パーツを選択するあまり、身長(特に脚の長さ)に対して長すぎるクランクを使っている子がめちゃくちゃ多いです。長すぎるクランクは下肢への負担が大きいため全くお勧めできません。身長170cmの大人が175mmのクランクを使うことすらためらうのに、130~140cm台のこどもが165mmのクランクなんて問題外です。お子さんが故障しないことが第一義なのに、変速性能や剛性、軽量性など競技的なパフォーマンスを優先している姿が、ここでも散見されます。

私は思います。その時点での最良のパフォーマンスを得るためには、お子さんの成長に合わせた部品選びをすることに尽きると。この1ヶ月間でどれだけ身長が伸びたか、腕が伸びたか、脚が伸びたか・・・をご存じですか?それは「ポジションが生もの」だからです。練習して強くなればポジションは変わるし、サボって弱くなっても変わります。大人でも昨日の自分と今日の自分は、もはや違う人物だからです。子どもの場合はそれに伸張が加わるわけですから、その変化たるや大人の比じゃありません。

結論
「適切なサイズの自転車に乗りましょう。」
声を大にして言うほどではない、極めてあたりまえのことですが、勝つことを目的化してしまうと見えにくくなってしまうのかもしれません。

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プロフィール

Nishii Takumi

Author:Nishii Takumi
●株式会社 地域資源バンクNIU 取締役兼CTO
●中京大学人工知能高等研究所 研究員
●博士(体育学)
●2008北京オリンピックMTB日本代表チーム 監督
●2010ユースオリンピック(シンガポール)・2014ユースオリンピック(南京) 自転車日本代表チーム 総監督

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